アンリ・マティス(1869-1954)は、20世紀を代表するフランスの画家と言われています。本展覧会は、日本において20年ぶりの回顧展になるそうです。マティスは、生涯にわたって、色と形を表現する可能性を探究しました。東京都美術館で開催されている『マティス展』では、若き日の作品から、晩年の「ロザリオ礼拝堂」までを一望することができます。
◆ 切り紙絵と最晩年の作品
一番感動したのは、「切り紙絵と最晩年の作品」の部屋でした。
この部屋に入った瞬間「わーっ」っていう感じ。
マティスは、切り紙絵について、
「ハサミでデッサンすること。色の中に生で形を切り抜いていくと、彫刻の直彫りを思い出す。」
と作品集『ジャズ』に書いています。
長年の色と形の探究を経て、ついに見つけた表現技法。
「切り紙絵」
色と線、コンポジションは、シンプルだけど味わい深い!
初期の作品から、深化・成長し、このような表現に至ったことを想像すると、その探究の道のりに胸を打たれました。
『オレンジのあるヌード』は、とても美しい作品でした。
◆ 色彩と形の探究!
今回の展覧会を観て、マティスの画風は、生涯にわたって、こんなにも変化しているものなのかと驚きました。
点描を技法を用いた1904年の作品『豪奢、静寂、逸楽』は、とても印象的な作品でした。
色づかい、構図、点描の構成など、とても挑戦的な作品だと感じました。
▽ こちらの看板に使われている作品です。
この頃、マティス自身は、色彩と線の衝突という課題を乗り越えることができず悩んでいたそうです。
小さな作品ですが、
『コリウール風景』(1905-06)という作品もよかったです!
パステル調の緑と、黄色の指し色がかわいい!
そして、晩年は、ロザリオ礼拝堂に取り組みました。
建物です!
ロザリオ礼拝堂は、南部のヴァンスにあります。
キャンバスから、建築へ。
その飽くなき探究心に驚きました。
本展覧会では、映像でロザリオ礼拝堂の全体像を見ることができました。
とても美しい建物で、太陽の動きと共に差し込む光が変化し、祝祭感にあふれた空間のように感じました。
一日の光の移ろいに合わせて、空間が変化する様子を4K高精細映像で撮り下ろしています。
めちゃくちゃきれいでした!
ぜひ、実際に建物の内部に入ってみたいと思いました。
◆ 印象的な「赤」
今回の展覧会で印象的だったのは「赤」でした。
たくさんある作品の中でも、この2作品に魅かれました。
1つ目は、『マグノリアのある静物』(1941)
画面全体の赤は、濃い赤色です。
中央にマグノリアが活けられた翡翠色の花瓶。
そのまわりを、クリーム色の貝殻(?)や緑色の花瓶が囲んでいます。
中央の円形は、「テーブル?」と思いましたが「鍋」なんだそうです。
この鍋は、ちょっとオレンジがかった赤色です。
そして、二つ目は、メインビジュアルにも使われている『赤の大きな室内』(1948)
こちらは、壁面も床も赤色の室内です!
壁にかかった絵画、テーブル、花瓶、動物の皮?
それぞれ対になって描かれていて、リズミカルです。
右下に黄色を置いているところが、『マグノリアの静物』と似ているなと感じました。
描かれている二つの絵画は、実際には、並列に並んでいるわけではなく、垂直につながっていて、右側のオレンジの絵画が飾られている壁面は、90度向こう側にあるものだそうです。
おもしろいですね。
画文集『ジャズ』に掲載されていた、
『馬、曲馬師、道化』
『運命』
に用いられていた「赤紫」色も印象的でした。
▽ こちらは、図録の表紙に用いられていた『黄色と青の室内』(1946)です。
- マティス展
- 東京都美術館
- 2023年4月23日―8月20日
色彩があふれていて、とても楽しい空間でした!