この映画は、なんと! テストなし! 通知表なし! 時間割なし! そして、国語・算数などの教科学習ではなく、体験学習を中心にして学んでいく「南アルプス子どもの村小学校」の様子を取材したドキュメンタリー映画です。
◆ 生き生きとした子どもたちの表情に驚いたー!
この映画に登場する子どもたちは、本当に生き生きしています。
びっくりしました!
あー、子どもの表情ってこんなにも豊かなんだ。
学校で、こんな表情を見せてもいいんだって。
木材で小屋を建てたり、ヤギを育てたり、そばを作ったり、もう、体験の規模が違い過ぎる!
心に残ったシーンを3つ紹介します。
1つ目は、グチャグチャのそば。
高学年が中心になって、そば粉や小麦粉、水の量を計ったようなのですが、失敗。おそばは、ぐちゃぐちゃの粘土状態に。最終的には、そばがきにして食べることに。
2つ目は、修学旅行の宿泊先へ、断りの電話を入れる場面。
予算の都合で、行き先を変更せざるをえなくなり、子どもが断りの電話を入れます。
「えー、そんなことまで子どもがするんだ!」と、とても驚きました。
3つ目は、卒業を祝う会(卒業式)での卒業生のスピーチ。
「南アルプス子どもの村小学校」へ通うことができた喜びと感謝、そして、これからの未来に向けた夢がつまったスピーチ。事前に書かれた原稿を読み上げるのではなく、わき上がってきた思いをその場でストレートに表現した言葉に感動しました。
◆ 南アルプス子どもの村小学校ってどんな学校?
テストなし、通知表なし、先生なし!
だけど、学校教育法に認められた学校法人です。
母体の「きのくに子どもの村学園」は、1992年に和歌山で開校しました。
その後、全国に広がり、2009年に「南アルプス子どもの村小学校」が開校しました。
「南アルプス子どもの村小学校」は、授業の6割くらいが「プロジェクト」と呼ばれる体験型学習です。
プロジェクトは、
- むかしたんけんくらぶ
- おいしいものをつくる会
- アート&クラフト
- クラフトセンター
- 劇団みなみ座
の5つ。
もうこれだけで、ワクワクですね。
子どもたちは、この中から一つを選び、一年間を通して学んでいきます。
メンバーは、1~6年生の縦割りで構成。
おそばの作り方とか、小屋の建て方とか、大人は教えてはダメなのだそうです。
自分たちでやってみて、失敗したら、調べて、修正する。
トライ&エラーの繰り返し!
それを見守るのが大人の仕事。
失敗の責任をとるのが大人の仕事。
子どもから失敗する権利を奪ってはいけない!
その考えに深くうなずきました。
この映画の舞台の中心は、「南アルプス子どもの村小学校」ですが、通知表のない公立小学校の伊那小学校、校則のない世田谷区立桜丘中学校の様子も紹介されています。
◆ 「教育システム」が「発達障害」をつくってる?
2022年12月、通常学級に在籍する小中学生の8.8%に、学習面や行動面で著しい困難を示す発達障害の可能性があることが、文部科学省より発表されました。
しかし、これは、発達障害の子どもが増えているとも言えるし、教育システムが現代の子どもに合わなくなってきているとも言えます。
好奇心旺盛な子どもってそもそも「多動」じゃないの? 「発達障害」って「病気」なんですか? 保育園までは、自分のことが大好きだった子どもも、小学校へ行くと人と比較され自分が嫌いになり、ちょっと多動だと薬まで飲まされちゃうって、おとなの方がおかしくありませんか。
オオタ ヴィン『子どもはミライだ! 子どもが輝く発酵の世界』木楽舎、p.147
発達障害と呼ばれたお子さんが南アルプス子どもの村小学校に入学する際には、薬をやめる約束をしてもらうのだそうです。
「薬でおとなしくなっていても、それは“教育”じゃありませんから」
これは、きのくに子どもの村学園の創始者、堀真一郎さんの言葉です。
この映画を観て、
「今、目の前の子どもたちに何ができるのか?」
自戒の念を込めて、真剣に考えざるをえませんでした。
子どもも、先生も、もっと自由になっていい!
子どもの頃、こんな学校があったら、行ってみたかったー
■ 映画『夢みる小学校』
・ 監督・撮影 オオタ ヴィン
・ 2021年/日本
・ カラー/91分
■ 書籍『子どもはミライだ! 子どもが輝く発酵の世界』
・ 著者 オオタ ヴィン
・ 発行年 2022年
・ 出版社 木楽舎
南アルプス子どもの村小学校のHPは、こちら。