ちくまプリマー新書は、学生向けですが、タイトルにひかれて購入しました。
本書では、やりたいこと至上主義に振り回されずに、「自らの進路をつかみとろう」と呼び掛けています。
◇ キャリア教育とは
1999年の中央教育審議会の答申で、はじめて「キャリア教育」という用語が登場しました。
高校を卒業しても、進学も就職もしていない若者が増加したからです。
◇ やりたいこと幻想
要するに、子どもや若者は、“絶対的な意味”で職業(仕事)をよく知らないのである。
「夢」をもつことは、大切なことであるが、中学生や高校生の知識では、範囲が狭く、メディアを通じて得た「情報」に飛びつくことになってしまいます。
やりたいことを探す前に、仕事や職業、また、「働く」ことへの理解を深めなければいけません。
「自己理解」と「職業理解」との往復的で豊かな学習があって、初めて自分のやりたいことの輪郭が見えてくるのです。
10代で、キャリアプランを立てるためには、もっと、社会と深くかかわっていかなければいけないでしょう。
◇ 職場体験幻想
現在、中学校では、職場体験が、ほぼ100%実施されています。
しかし、その職場体験が、一過性のイベントになっています。
また、その職種の選択肢は、学校によって大きく違ってきます。
現在の学校教育では、職場体験を実施しても、その体験を、自分自身のキャリアプランへ落とし込む時間は、十分に確保されていません。
その体験から学んだことを、「気づき」⇒「認識」へと高めていくことで、初めて、職場体験の意義が見えてくるのではないでしょうか。
◇ 正社員幻想
九州のある私立大学のキャリア支援センターの入口には、一万円の札束を模した山が、二つ並べられているらしい。ひとつの山は、2億9000万円相当、もうひとつは、9120万円相当である。言うまでもなく、正社員とフリーターの生涯賃金の差を示したものである
すでに、現代では、正社員とフリーターを対立させる構図が崩れていますが、学校現場では、危機感をあおり、「やりたいこと」を探すという軸が、いつの間にか、雇用形態(正社員かフリーターか)の選択という軸へすり替えられてしまいます。
そして、多くの子供たちは、自分の手持ちの札の中から、何とか折り合いをつけて社会へ出ていくことになります。
現代は、すでに正社員モデルを捨てなければいけない時代に入っています。
◇ 学び方を学ぶ
キャリア教育という狭い枠組みで、人生を捉えるのではなく、年齢、節目(ライフステージ)ごとに、キャリアプランを見直していくことが大切になってきます。
そのとき大切になるのが、「学び方を学ぶ」という姿勢です。
そして、「未来マップ」と「羅針盤」を、常に成長させていくことで、自分の進んでいく方向をつかむことができるのです。
「未来マップ」は、学びや体験、人との関わり合いにより、より詳細で広大なものに成長させていくことができます。
「羅針盤」は、判断基準と言い換えることもできるでしょう。自分は何を基準にして物事を決めていくのかという軸です。
これらは、何才で完成するというものではなく、生涯をかけて育てていくものと言えるでしょう。
◇ トリガーワード
ロスジェネ世代/標準/ストレーター/生き残り競争/就職予備校/自分を見つめ/やりたいこと探し/社会認識/キャリア・アンカー/キャリア・アダプタビリティ/方向感覚/職場体験/キャリアプラン/ライフステージ/クランボルツ/正社員モデル/学び方を学ぶ/未来マップ/羅針盤
- 題名 キャリア教育のウソ
- 著者 児美川孝一郎
- 発行年 2013年
- 出版社 ちくまプリマー新書