【本物を学ぶ学校 自由学園】1921年に創立された自由学園は、未就園児から大学までの一貫教育を行っています。「24時間の生活すべてが勉強」という教育理念のもと、自主独創を重んじる教育、仲間と共に行う学校生活・寮生活、自分たちの手で作物を育て、生徒が食事を作る等、その教育方法はユニークです。
◆ 自由学園とは?
自由学園は、1921年に羽仁もと子、吉一夫妻によって東京・池袋に女学校として創立されました。
「詰め込みではない教育を」、「競争ではなく、協力の社会を」と願って、26名の女子中学生から始まりました。
そして、102年後の現在、キャンパスは東京都東久留米市にあり、広さは約10万㎡。
幼児生活団幼稚園、初等部(小学校)、女子部/男子部(中等科・高等科)、最高学部(2年・4年課程)があります。
女子部、男子部、最高学部には寮があり、基本的な運営は、すべて生徒自身が行っています。
また、児童・生徒の自主性を重んじるカリキュラムは斬新で、その灯を100年以上も守ってきたということに驚かされました。
◆ 子どもたちの自主独創を支える自由学園の食堂
自由学園の「食事」は、初等部は保護者が、中高等科は生徒がつくります。
「給食」ではなく、「食事」です。
園内には全部で10の台所があり、3万坪の校庭には畑や農場があります。
畑では、ダイコン、ニンジン、ネギ、ジャガイモなど年間で約23種類の野菜が生徒の手で栽培されています。
食肉となる豚も育てています。
ご飯は大きなかまどに薪をくべて炊きます。
生徒たちは、調理を通して、料理の技だけではなく、栄養学や、時間の組み立て、責任感を学んでいきます。
また、大人数(約260名)の食事なので材料の量を量ることは、数学の学びにもなります。
中等科では、畑、果樹、きのこ、養魚、養豚、の5つのグル-プに分かれます。
生き物を育て、その命をいただくまでを学んでいきます。
◆ 生徒たちの自治で学園を運営
食事だけでなく、行事の企画、運営、校則の制定、キャンパスの樹木の世話など、生徒たちが行うことは多岐にわたっています。
今は教育現場にグローバル競争に打ち勝つ人材育成が求められていますが、この学校は人材育成ではなく、どんな時代どんな社会にあっても、自分の人生を自分らしく歩み、そしてよい社会とは何かと自分の頭で考え、これをつくっていく人が育つことを願っています。
自由学園長高橋和也 p.28
全てを自分たちの手で行う寮生活には、厳しさもあります。
その反面、自分たちの可能性を実感することができるのではないかと思います。
寮生活は、とにかく厳しかったです。2~3週に一度くらい、朝4時半に起きて全員の朝食を自分たちで作る当番がある。洗濯も、掃除も、道具の管理も、すべて自分たちでやるのです。
卒業生の言葉 p.29
ベルトコンベアーに乗っているような感覚で学校生活を送るのではなく、自分たちの手で学校生活をつくっていくという手応えは、卒業後の人生に大きな力を与えるのではないでしょうか。
自由学園には、自分の手で、自分の人生を切り拓いていくことができるパワーを培う土壌があると感じました。
◆ トリガーワード
本物/生活団/よい社会/自力/食事/リベラルアーツ/相手の尺度/伝統と知性/段取り力/センスオブワンダー/デンマーク/いつか支えたい/他者のために/多文化共生
- 題名 本物を学ぶ学校 自由学園
- 取材・執筆 島村菜津
- 発行年 2021年
- 出版社 婦人之友社