令和4年度 伊那小学校指導研究会③【内から、外から】この子の今を、感じ取る!

2023年2月に伊那小学校の研究会へ参加し、これまでの活動の様子が気になりました。そこで、過去の研究紀要を購入しました。令和2・3・4年版の研究紀要を読んで感じたことを書きました。

伊那小学校の今年度のテーマは、内から育つ子≪自らのあゆみのなかで、思いがあふれ出る子ども≫でした。

▶ 令和4年度 伊那小学校指導研究会①【能動的子ども観】様々なテーマで探究する子どもたちの姿に驚きました!

▶ 令和4年度 伊那小学校指導研究会②【教科書を越えて】「材」をどうやって立ち上げるのか?

◆「子どもの今を感じ取る」とは?

研究紀要を読み、「子供の内側から生まれる思いを大切にしている」ことが、どの原稿からも伝わってきまし。

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その理由は、子供の成長の様子や変化が、丁寧に記録されていたからです。

仕草、表情、つぶやき、息遣いから、今、目の前にいる子供が何を考え、何を感じているのか、全身で感じ取っている教師の姿が見えてきました。

公開授業の後、ある先生は、常に付箋を持ち歩いていて、気になったことをメモし、授業後、それを基に記録をしていると話していました。

子供たちの会話やつぶやきを記録していくことは、とてもたいへんです。
私も、ポケットに小さなメモ帳を入れているのですが、ここまで細かく子供の発言を記録することも、憶えておくこともできません。

授業後、「あの時、○○さんがこんな発言をしていた。」と再現することは、とても苦手です。

そもそも、子供の様子を振り返る時間もなく、日々の雑事に追われることの方が日常です。

しかし、伊那小学校の紀要には、子供たちの発言が細かく掲載されていて驚きました。

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子供の様子を見取る時に大切にされていることが、「対話」でした。

  1. 子供と子供(他者)
  2. 子供と材(学習活動)
  3. 子供と自分自身

の3つの「対話」です。

言葉として聞こえるものがあれば、聞こえないものもあります。

教師がこの子の内に何が起こっているのか、五感を使ってつぶさに感じ取ろうとしている様子が伝わってきました。

◆ 子供と授業をつくる

伊那小学校を訪れて、最初に浮かんだ疑問は、「学級ごとに活動内容が違うと、他学級のことを羨む子供がいるのではないか?」ということでした。

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しかし、研究紀要を読み、ここまで丁寧に子供たちと向き合い、とことん話し合い決めた「材(学習活動)」なら、多くの子供たちが学級の「材」に誇りに思っているのではないかと感じました。

私が心配したような、「隣の学級がいいなー」という声は、私が想像したよりも、はるかに少ないのかもしれません。

また、「子供と授業をつくる」ことは、子供の探究心や好奇心を育むためにもとても大切だと感じました。

その基盤があるからこそ、授業が知的に楽しくなるような雰囲気がつくられているように感じました。

そのような教室では、子供たちは受け身ではなく、常に、主体的に授業にかかわる姿勢が求められます。

研究紀要には、他教科(理科と国語)の授業の様子が記載されていました。

総合学習を通して、学びを探究する基礎体力が身に付いているからこそ、国語でも、理科でも、それ以外の教科でも、教科書を越えた「学び」が自然とできるのではないかと感じました。

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◆ 伊那小学校のスピリットを取り入れる

現在の勤務校では、伊那小学校のような大規模な取り組みはできません。

しかし、「子供と授業をつくる」という姿勢なら、私でも、まだまだ挑戦できると感じました。

子供たちと話し合い授業の方針を固めていく方法は、とても参考になりました。

そして、3年間分の研究紀要を読み、子供たちがどのように成長しているのかがよくわかりました。

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例えば、今年度の3年生のある学級は「まちづくり」をテーマに活動していたのですが、この学級の子どもたちは、1年生からの積み上げがあるのです。

まず、1年生時には、学区探検を通して、「自分たちで楽しい場所を作りたい」という思いをふくらませました。そこから、『ダンボールでつくろう』という活動に発展していきました。

2年生時には、ダンボールで「まち」を作る(!)活動から、伊那の街を調べる活動に発展していきます。そして、伊那の街のよさや歴史にも目を向けていきます。テーマは、『伊那の街を知って、剛組の「まち」をつくろう』でした。

そして、今年度のテーマは、『わたしたちのまち(伊那市)をもっと元気にしよう』でした。学区探検から、伊那市の課題を見つけたり、CMを作ったりといった活動につながっていきます。最終的には、伊那市のマスタープランを考え、市の方へ届けるのだそうです。

このような3年間の流れも、最初から決められていたわけではなく、「子供たちの内」を感じ取り決められたことであって、子供たちの反応によっては、まったく違う学習内容になった可能性もあったということです。

教師側の懐の深さは、子供たちへの信頼感にあふれていました。

今回の訪問で、「総合的な学習の時間」に対する見方を、大きくアップデートさせることができました。

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伊那小学校の職員の皆様、本当にありがとうございました!