ウェブメディア「ほぼ日刊イトイ新聞」は、1998年に創刊され、エッセイ、対談、インタビュー記事の読み物のほか、手帳や雑貨、食品などの販売をしている会社です。
社長は、糸井重里。
2017年に、ジャスダック市場に上場しました。
その「ほぼ日」の経営について、糸井重里にインタビューを行いまとめたものが本書です。
なぜ、「ほぼ日」がここまで成長できたのか?
とても興味深い話が、たくさんありました。
ほぼ日手帳
ほぼ日手帳は、私も愛用しています。
最初、ほぼ日の生徒手帳を作ろうという発想から始まったそうです。
それが、現在は80万冊を売るヒット商品になりました。
手帳は、同業者から容易に真似されやすい商品でもあります。
ぼくは、お客さんはかならず「心」の問題をわかってくれていると思っています。ビジネススクールの学生が言うように、大企業がうちの手帳と同じものをつくって、100倍の量を売ろうとしたとします。「ほぼ日よりもはるかに安くすれば、みんながほしがるよ」というビジネスモデルも描けます。
けれど、それは間違いです。
どうしてダメかというと、その手帳には「心」の問題が抜けているからです。
つまり、形だけを真似することはできるけど、ほぼ日の「心」までは、真似することができないよ、ということです。
「心」は、「誠実さ」に置き換えることができるかもしれません。
それは、ほぼ日手帳を手にとってみると分かります。
1日1ページ、日々の言葉、2本のしおり、豊富なカバーなど、そこには、今まで改良に改良を重ねてきた、アイディアがいっぱいつまっています。
そして、ほぼ日手帳ユーザーが、その良さを宣伝するという口コミのネットワークが、自然と出来上がりました。
ほぼ日手帳を製造している会社を、下請けの会社ではなく、ともに製品を作る同志として捉えているところからもその「誠実さ」が伺えます。
席替えをする会社
ほぼ日のオフィスでは、ほぼ四か月に一回、くじ引きで席替えをしています。
部署やチームに関係なく、席替えが行われているそうです。
この席替えをはじめ、社員の関係性が、フラットになるように様々な仕掛けをしているようです。
定期的に席替えをしたり、プロジェクトベースで自由にチームを組んだりすることで、社員がお互いの仕事を理解し、一緒にやっていこうという風土が育まれている。役職の上下関係もあまり存在せず、フラットなかかわりの中で仕事が進んでいく。
この風通しの良い空間から、お客さんを喜ばせる商品が生まれるのだと思います。
古典を学ぶ「ほぼ日の学校」を始めたり、「ほぼ日のアースボール」という地球儀を発売したりと、既存の枠とどまらない経営をしています。
ほぼ日は、人体模型図のような「内蔵型組織」を目指しているそうです。
そこには、上下関係がなく、お互いが補完し合う「場」をつくろうという意味が込められています。
人によろこんでもらう
二〇年ほど前、偶然のようにピーター・ドラッガーの本を読みはじめて、「企業の目的は顧客の創造である」という言葉に出合いました。それ以来、どうしたら「顧客の創造」ができるのかを考えて、「人々がよろこんでくれるものを新しく生み出す」というふうに言い換えられると思いました。
売上よりも、利益よりも、人をよろこばせることで市場を開拓していく。
このクリエイティブさは、ほぼ日にしかないものだと思います。
商品のキャッチコピー、写真、企業のバックグラウンド、製造過程までトータルで商品を魅せて、販売していく方法はとてもおもしろいです。
買っても買わなくても、読み物としておもしろ。
気になったら、思わず欲しくなってしまう商品がたくさんあります。
ほぼ日は、上場の約一年前に「夢に手足を。」という言葉を発表しています。
夢に手足がついたら、とっても楽しそうだと思いませんか。
夢が、自分の足で歩いて、自分の手でよろこびをつかむ。
ぼく自身は否定感を抱えている人間ですが、「生まれてよかった」と思える人が集まる社会の方が人を幸せにするはずです。だから肯定感につながるものを提供することが、ほぼ日のベースにあるのだと思います。
「ほぼ日」から、次にどんな商品がうまれるのかとても楽しみです。
トリガーワード
生き生きと/おもしろい/わからない問題/「心」/いい時間/LIFE/供給源/役に立つよろこび/働き方改革/誠実と信頼/雪かき/やさしく/動機/実行/集合/求心力/完成図
- 題名 すいません、ほぼ日の経営。
- 聞き手 川島蓉子
- 語り手 糸井重里
- 発行年 2018年
- 出版社 日経BP社
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